毎日山の旅レポート 2018年08月30日 村野匡佑
北アルプス奥穂高岳晩夏
「美穂」さんという名前の由来は、山を愛する私たちは、どうしても「美しい穂高」と考えてしまいます。
「美しい穂高」を目指して、8月25日(土)に出発した「毎日山の旅」登山旅行「奥穂高岳・4日間」の山旅日記をお届けします。
北アルプス、長野県と岐阜県の県境に位置する奥穂高岳は、北穂高岳、前穂高岳、西穂高岳・明神岳といった3000m級の山々に囲まれ、標高は3190m。富士山、北岳に次いで、日本第3位の標高を誇ります。
奥穂高岳は、穂高連峰の盟主と言われ、その堂々たる山稜の眺めは圧巻です。
奥穂高岳と穂高岳山荘
夏休みも終わりに近づき、8月最後の週末と重なり上高地は大混雑。大正池付近からバスの渋滞が続き、上高地バスターミナルに到着する時間の目途が立たず、帝国ホテル前から下車し、歩いて上高地へ入ることとなりました。
観光バスがズラリと並ぶ8月の上高地バスターミナル
1日目の行程は、上高地から横尾までの約11㎞を3時間位で歩きます。大阪からのバスは「奥穂高岳・北穂高岳・南岳」(ジャンダルムから大キレット)へと向かうツアーとの混乗でしたので、河童橋で別れてそれぞれの目的地に向かって歩行を開始。上高地への到着がお昼を過ぎていたこともあり、足早に林道を歩き横尾山荘へと向かいました。
河童橋で別れてそれぞれの目的地へ
2日目の行程は、横尾から本谷橋を渡って涸沢カールを歩き、ザイテングラードを登って穂高岳山荘まで向かいます。
横尾から涸沢までは、良く整備された比較的なだらかな登山道が続きます。途中には屏風岩、南岳、前穂高岳などの展望を眺めつつ、徐々に高度を上げていきます。
幅は約500m、高度差約300mの屏風岩
涸沢では雄大なカールの眺望を楽しみながら、少し長めの休憩を取って、改めて気持ちを引き締めてザイテングラートへと向かいます。涸沢は夏も残雪と岩とのコントラストが素晴らしいのですが、秋になりますと紅葉を求めて多くの登山者が訪れます。暑かった今年の夏は、ナナカマドの鮮やかな発色を期待したいものです。
涸沢からの眺め 左の雲の中に奥穂高岳、中央は涸沢槍、右は北穂高岳
「ザイテングラート」とはドイツ語で、「岩壁の支尾根」を意味しますが、今ではすっかり奥穂高岳へ登るこのルートの固有名詞となっており、その名前の意味に違わず岩場の急登が続きます。ザイテングラートの取り付きでは、浮石、落石に注意するよう参加者に伝えて慎重に登っていきます。ご参加者された皆様は、緊張と集中の連続からか、普段より少し息が上がっているようにも見えました。
ザイテングラートの中間付近から見た涸沢カール
3日目の行程は、いよいよ奥穂高岳の山頂にアタックします。穂高岳山荘からの登山道は、すぐに岩場と鉄ハシゴの連続が続く急登です。ザイテングラートの歩行以上に緊張しますが、あせりは禁物。手元、足元をしっかり安定させながら登るよう参加者に伝えます。鉄ハシゴを乗り越えても緊張と集中の継続が必要です。大きな石が多く、飛騨側(岐阜県側)は崖になっており、歩くだけとはいえ浮石などに注意しながら足元を確認して歩きます。
あいにく穂高岳山荘から上部は雲の中で、下界が見えず高度感を感じることがなく登りに専念できたことが良かったのかも知れません。
穂高岳山荘から歩き始めて約40分、奥穂高岳の山頂3190mに全員無事登頂。
標高3000mを越えると風も強く気温も下がり、フリースの上に雨具を着ていても、震えを感じる寒さでした。8月とはいえ、残暑が厳しい下界とは異なり夏の終わりを感じます。山頂で各自が記念写真を撮影し、展望も期待できないので穂高岳山荘へと下山しました。
奥穂高岳山頂 展望は期待できなかった
残念ながら日本第3位の標高を誇る山頂からの展望を眺めることはできませんでしたが、岩場の登降や雄大な涸沢カールを眺めることができて、ご参加者された皆様は大変満足されていました。下山時も気を緩めることなく、事故や怪我もなく全員が無事に上高地まで下山。
色づくナナカマドの実とともに、穂高岳の夏の終わりを感じた登山旅行でした。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。またのご参加をお待ちしています。
登山者の休憩ポイント 本谷橋で記念撮影
●コース●
上高地から入り、横尾、涸沢を通り、ザイテングラートの岩尾根を登って白出乗越に出て、奥穂高岳へ向かうのが一般的。岩場を通るコースのなので、落石に備えてヘルメットは準備したい。西穂高岳、前穂高岳、北穂高岳につながるコースがいくつかあるが、上級者向けなのでステップアップしてから挑戦してほしい。
●参考・引用文献●
国土地理院発行地形図「穂高岳」(25000分の1)
秋の訪れを知らせるナナカマドの実
◎筆者プロフィール◎
村野匡佑(むらのきょうすけ)【毎日新聞旅行 国内登山担当 】
1984年生まれ兵庫県出身。大学卒業後エンジニアの道を目指すが山への想いが強く、国際自然環境アウトドア専門学校(日本で唯一のアウトドア専門学校)で、3年間に渡り登山技術や様々なアウトドアの知識を学ぶ。2018年4月から毎日新聞旅行で国内登山を担当。2018年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。