〜山記者の目〜 2019年04月03日 小野博宣
関西/和歌山ステップ①高野三山(2019)
高野山は宗教都市といっていいだろう。一歩足を踏み入れると、寺院の甍(いらか)が連なり、堂々とした山門もあちこちにある。見事な景観だ。ただ観光地化も劇的に進んでいる。内外の観光客の嬌声(きょうせい)があちこちから聞こえ、静寂とか清浄な雰囲気を楽しむのは難しいと感じた。
奥之院入り口。高野三山へここからスタート
初心者・入門者が富士登山に挑戦する「初心者のためのステップアップ 富士登山塾2019」のステップ1が2019年3月下旬、高野山で開かれた。弘法大師廟(びょう)のある奥之院を囲むようにそびえている摩尼山(まにさん・1004㍍)▽楊柳山(ようりゅうさん・1008㍍)▽転軸山(てんじくさん・900㍍)を縦走する。この尾根道は女人禁制の時代に、女性たちが歩いたことから「女人道」と言われるそうだ。
登山道の入り口で高山ガイドがアドバイスする。「ゆっくり歩きましょう」
高野山中の駐車場に参加者は大阪からのバスで到着した。一行20人はここで身支度を整えた。新品の登山靴やザックがまぶしい。中には登山靴ではなく、運動靴の参加者の姿もあった。高山宗規・登山ガイドは「くるぶしを守ることのできる登山靴をはくのが理想です。ステップ3、4になると岩場も出てきます」と語った。
きつい登りにも笑顔
高山ガイドが先導しながら、奥之院の参道を進む。車道から登山道へ。うっそうとしたスギ林の中、傾斜が増してくる。正午前に摩尼山に到着した。軽く汗をかき、つらそうな表情の人もいた。「熱い。思ったより登りがきつかった」との声も。駐車場からの標高差は200㍍程度だ。40分ほどで登れるのだが、山歩きの初心者にはどんな傾斜も厳しく感じるものだ。47歳で登山を始めた筆者もそうだったから、気持ちはよく理解できる。登りはゆっくり歩くことに尽きる。友人と会話を楽しみながら歩ける速度でじっくりじっくりと歩みを進める。「息があがらないように」と強く意識してカメのようにのろのろ歩きたい。
急な下りを慎重に歩く
楊柳山から下山する際、急な下山路が待ち受けていた。高山ガイドは「足の裏全体を地面につけてください。そうすれば滑りにくくなります」とアドバイスした。登山には「登りは根性、下りは技術」という言葉がある。安全に降りるためには、ちょっとしたコツと経験が必要なのだ。登りと同じく、ゆっくり足を運ぶ。歩幅を極めて狭くし、下ろす足は体の間近に置く。できるだけ平らなところを探して歩く。この動作を根気よく続けて、集中力を絶やさないことも大切だ。
転軸山に登頂し、ハイタッチ。「お疲れさまでした」
最後の転軸山を経て一行は下山口へ向かった。尾根道ではほとんどほかの登山者に出会わず、静かな山行となった。その昔、奥之院への参拝を許されなかった女性たちは、弘法大師への渇仰(かつごう)を胸に歩いただろう。響いたのは彼女たちの祈りの声と足音だけだったかもしれない。【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】(2019年3月30日登頂)
転軸山山頂で記念撮影。みんな笑顔だ
【富士山へ向けて3 持ち物その3】登山道具の値段は高い。登山靴は安いものでも1万円台後半はするだろう。ザックも2万円以上と考えたほうが良い。登山道具をできるだけ安く購入するコツを紹介しよう。
まずは、登山道具店の会員になることだ。どこの店もリピーターの確保などのため、ポイント制などの会員制度を設けている。筆者も石井スポーツ、好日山荘、モンベルなど大手専門店の会員カードを所持している。また、規模の小さな独立系の店でも同様の制度があるので、活用したい。もうひとつは、アウトレットやセールスを利用することだ。ネットや販促チラシ、ダイレクトメールでセールスの時期を確認しよう。アウトレットコーナーを常設している店もある。事前に下調べをして出かけよう。
- 〜山記者の目〜プロフィール
- 【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
- 1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長