毎日山の旅日記

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関東(東京毎日)ステップ①高尾山(2021)

 百花繚乱とはまさにこの山のことだろう。東京都の高尾山(599㍍)のことだ。サクラはもちろんのこと、ニリンソウ、スミレ、シャガ、スノードロップ、ネコノメソウが登山道のあちこちに愛らしい花を咲かせていた。なんともかれんで、見飽きることはない。
シャガの花 シャガの花
 2021年3月26日、初心者が富士山登山を目指す「安心安全富士登山2021」のステップ1・高尾山に参加した。登山初心者や久しぶりの方が、8月の富士山を目標に、低山から毎月山に登るという講座だ。参加者12人は、午前9時半に京王高尾山口駅の改札に集合した。ベテランの山岳ガイド・太田昭彦さんがあいさつの後、山道での歩き方を伝えた。「都会の歩き方とは違い、登山道では足の裏全体で地面に足を下ろします」と語り、実演した。参加者も真新しい登山靴を上げ下げして、頷き合っていた。靴紐の締め方を指導した後に歩き始めた。
休憩中に登山道の歩き方を伝える太田ガイド 休憩中に登山道の歩き方を伝える太田ガイド
 高尾山にいくつかある登山道のうち、6号路から琵琶滝を通過し、1号路に合流するルートを歩く。琵琶滝から1号路までの登山道は傾斜が急で、岩や木の根が露出している場所もある。琵琶滝で小休止した後、太田ガイドが「ここからが本番ですよ」と声をかけて、石の階段を登り始めた。
琵琶滝コースを登る一行 琵琶滝コースを登る一行
 傾斜のきつい登山道を一行は黙々と登った。「ゆっくり歩きますよ」「前の人と間が空いてもあせらないで、ゆっくり歩いてください」「ご自分のペースで」と励ます太田ガイド。参加者も息を弾ませることはなく、太田ガイドの後ろを歩んだ。1号路に合流すれば、山頂までは快適な道が続く。神社仏閣を見学した後、山頂に到着した。平日というのに、大勢の登山者や観光客でにぎわっていた。遠足だろうか、大勢の子供たちの隊列もあった。ここで昼食の時間となった。参加者たちは晴天の下で、それぞれの弁当を広げた。
にぎわう高尾山山頂 にぎわう高尾山山頂
 下山は4号路をたどった。傾斜がきつい下りや幅が狭く片側が崖になった場所もある。気が抜けない登山道なのだ。太田ガイドは、高い段差を降りる際のコツとして「ドスンと降りずに、静かに降りるように」と注意喚起をした。ストックについても「下りに自信のない人はぜひ使ってください」「ストックは上から下にしっかりと突きます」と話した。
みやま橋を渡る みやま橋を渡る
 また、4号路には高尾山で唯一のつり橋「みやま橋」がある。3月の涼やかな風が吹くつり橋を、参加者たちは「揺れるね」と歓声を上げながら渡った。はじめは表情が硬かった参加者も、このころには互いに打ち解け、「富士山までのツアーを予約しましたか」「ええ、予約しました。一緒に頑張りましょう」と声を掛け合っていた。女性の参加者の一人は「登山はまったく初めて。今日は苦しかったが、次の大山も頑張りたい」と笑顔で語ってくれた。
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
高尾山と天狗について解説する太田ガイド 高尾山と天狗について解説する太田ガイド
山のコラム(2)  高尾山はいい山だ。森が深く、実に見どころが多い。山頂からの丹沢の峰々や富士山の眺めは秀逸だ。陣馬山(854㍍)から高尾山までの縦走は5~6時間かかる。夏山登山へ向けた訓練にはもってこいだ。  高尾山を初めて歩いたのはいつだったか。はっきりとした記憶はない。だが、今は四季を通じて登っている。花を愛でるのも楽しみの一つだ。もうひとつは食べ歩きだろう。 裏高尾から山頂、そしてふもとに至る茶店のお団子、なめこ汁を食べ比べるのもいい。筆者のお勧めは山腹の「ごまどころ権現茶屋」の八王子ラーメンと「高尾山スミカ」の天狗焼だ。権現茶屋は多摩地区でラーメン店を運営する会社が手掛ける。それだけに味は折り紙付き。天狗焼きは黒豆のあんこがたっぷり入っているが、さほど甘くない。甘いものが苦手な私もおいしくいただける逸品だ。登山の折にはぜひ食べてほしい(小野)。
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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