5. その他の登山装備
登山には様々な山行スタイルがあります。現在では登山のジャンルに含めるのかどうか疑問なのですが、「トレラン」と略される山岳地帯を走る「トレイルランニング」もあります。
トレランの選手はストックを持って走っていませんが、中高年の登山愛好家にはストックは、多用されており登山用具の必需品という方がおられるのも現状です。
その他の登山装備として、以下、簡単に紹介しておきましょう。
- ストックの種類
- 「ストック」はドイツ語では「シュトック」と発音するのですが、日本では「ストック」が定着しています。日本語では「杖」となります。
現在、販売されているストックは、グリップ部分が「T字」タイプと「I字」タイプがありますが、「I字」タイプはトレッキングポールとも呼ばれています。「T字」タイプと「I字」タイプのそれぞれの特長としては、「T字」タイプは、どちらかと言えばシティーウオーキング用です。ストックを伸ばした状態での長さが「I字」タイプと比べて短く、登山の下りなどは、ストックを着くために前傾姿勢になりがちです。下りの前傾姿勢は、頭が前に下がってしまい、転倒の原因にもなりますので登山では、「T字」タイプのストックは、あまりおすすめできません。
トレッキングポールとも呼ばれる「I字」タイプは、スキーやクロカンの選手が使用しているように、グリップの安定に優れており、またストックを伸ばした時の長さが「T字」タイプより長くなりますので、下りの際も長めに調整し、前傾姿勢にならずにストックを着くことができます。
これからストックを購入される方は、グリップが「I字」タイプのものをおすすめいたします。
- 地図とコンパスは必要
- 登山には地図とコンパスも必要です。地図の読み方やコンパスなどは、我流では習得できません。経験と知識や技術のあるリーダーや仲間から使用方法を学んでください。
持参する地図は、国土地理院発行の1/25000の「地形図」が基本となります。
地形図には、コースタイムなどの記載はありませんが、等高線から地形の形や登山道を読み取るのに適しています。各社から市販されている「登山地図」は、登山道やコースタイム、山小屋、ビューポイントなどの情報が記載されています。
いずれにしても、ご自身の現在地や視界の悪いガスの中でも、自分達がどちらの方角に向いて歩くのかなどを、地図とコンパスを用いて導きだせることは、大切な登山技術のひとつです。
コンパスにも様々な種類がありますが、登山で役立つのは「マップ用コンパス」(オリエンテーリング用のコンパス)と言われる目盛や文字が透明の台座プレートに書かれているタイプを強くおすすめいたします。
昔は水筒の蓋に小さなコンパスが付いていましたが、蓋に付いたコンパスでは地図とコンパスを一緒に使うことはできません。
- ヘッドランプも必携
- 街中で生活していますと、「漆黒の闇」を経験することはできません。どこからか灯りが差し込んできたりするのですが、山中では文字どおり真っ暗になってしまいます。
人間はフクロウやムササビのように真っ暗な中では、満足に動くことはできません。
ヘッドランプは、形、明るさ、電源となる電池の種類によって様々な種類が販売されていますが、現在はやはりLEDを光源としたものをおすすめいたします。
ヘッドランプの明るさは、ルーメンという単位で表されています。目安として、100〜200ルーメンの明るさのものを選んで下さい。
また、山行には予備の電池も持参してください。日帰り登山の計画で入山しているのですから、日が暮れても下山です。日帰り山行でもヘッドランプは必需品です。
- ホイッスル
- 登山になぜホイッスルが必要なのでしょうか。混雑する夏山の登山道の交通整理をするためにではありません。
ご自身が万が一、登山道からの滑落などのアクシデントの合われた時に、「おーい助けてくれ。ここにいるぞー」と大声を出す変わりにホイッスルが役立ちます。声を出し続けることは結構疲れますし、声がどれだけ遠くへ届くのかも不安です。
ホイッスルは他の登山者に居場所を知らせたり、救助を要請したりする時に役立ちます。軽くて小さいものですから、ぜひ山行に持参してください。
- 水筒
- 「毎日山の旅」でも「あっ、水筒忘れた!」という人は別として、あえて水筒あるいは、それに代わるものを持参していない人とは会ったことがありません。
登山に限らずどんなスポーツでも、水分補給は最も大切なことのひとつです。水筒の中身の基本は「水」です。
水は、飲料としてはもちろん、すり傷を洗う、暑いときは首筋を冷やす、顔を洗う、沸かすとお湯になり、何にでも利用できます。
お茶やスポーツドリングで首筋を冷やすのは、ちょっと無理がありますので、水筒の中身は「水」を入れることが基本ということをご理解ください。
お湯、お茶やスポーツドリンクは、お好みに合わせて「水」とは別の容器でお持ちください。
- 救急薬品やツエルトなど
- 山行中に転倒し、すり傷を作ってしまった。悪いことにすり傷は土で汚れている。としましょう。スポーツドリンクではすり傷を洗うことはできませんので、水で洗うことが重要です。
繰り返しになりますが、やはり、水筒や容器の中身は水が基本です。水洗いした後に、応急処置としての絆創膏、足首などの捻挫に対応できる固定用のテープ、三角巾、包帯、湿布類などの救急薬品一式は、万一の時に備えて「毎日山の旅」の添乗員は常に携行していますが、添乗員は医者ではありませんので、ご参加された方に内服薬の提供は法的にできません。胃腸薬、酔い止め、かぜ薬、下痢止めなどの常用されている内服薬は、ご自身でご持参ください。
「山行にツエルトが必要ですか?」との問い合せがよくありますが、そもそも「ツエルト」とはドイツ語で「テント」を表し、日本では簡易テントを意味します。ツエルトは、雨避け、雨具の変わり、防寒着の変わり、着替えやトイレの際に被る、そして最も大きな役割としての簡易テントとなり様々な用途に利用できます。
現在のツエルトは、折りたたんだ状態では本当に小さくなりますので、山中のアクシデントに備えてご持参を強くおすすめいたします。